当院で診療する主な疾患とその症状
Symptoms and Diseases
発熱や咽頭痛、咳などの一般的な風邪症状で来院される方を始め、生活習慣病と循環器疾患の方を多く診療しています。
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高血圧症や脂質異常症では、自覚症状がないことが多いです。
糖尿病で高血糖の方では、のどが渇きやすかったり、頻尿などがみられることがあり、また糖尿病の罹病期間が長い方では目が見えにくくなったり、足先の痺れがみられることがあります。 -
息苦しさ、胸苦しさ、胸部圧迫感、胸が締めつけられる感じ、胸痛、背部痛、動悸、脈が飛ぶ、失神、むくみ(特に下肢)など
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睡眠時に息が止まる(無呼吸)、睡眠時の大きないびき、朝の目覚めが悪い、昼間の眠気やだるさ
生活習慣病
これまでに受けた健康診断(健診)で何か引っかかったことはないでしょうか。
会社の健診などで異常を指摘されたことをきっかけとして、二次健診目的で受診される方の中で多いのが生活習慣病です。
生活習慣病には、高血圧症、脂質異常症(高脂血症、高コレステロール血症)、2型糖尿病が含まれます。
生活習慣病は、生活環境や習慣を見直すこと(生活療法)で改善が期待できる疾患群ですが、疾患の程度によっては薬物療法との併用を考慮する必要が出てきます。
生活習慣病を指摘された方の大半は自覚症状がないことがほとんどです。ではなぜ生活習慣病のコントロールが大切なのでしょうか。それは、動脈硬化の進行と深い関連があるからです。年齢とともに動脈硬化は徐々に進行します。生活習慣病があると、その程度や重複疾患と罹病期間にもよりますが、動脈硬化進行の更なる加速につながります。ヒトの動脈は全身隅々まで走行しており、動脈を介して酸素や栄養を全身へ送り届けています。動脈硬化が進行すると、動脈壁にできたプラーク(コレステロールなどのかたまり)などにより動脈内腔が細く狭くなっていき酸素や栄養の供給不足を生じたり(虚血)、動脈プラーク破綻により 血管が詰まったり(梗塞)、動脈壁が脆くなり壊れること(出血)により、動脈病変を生じるだけでなく、供給先の様々な臓器 障害を引き起こします。例えば、心臓(心筋梗塞、狭心症など)、脳(脳梗塞、脳出血など)、腎臓(慢性腎臓病など)、眼(眼底出血など)、大動脈(大動脈瘤、大動脈解離など)、下肢血管(閉塞性動脈硬化症など)の病変や障害の要因となりうるのです。このように動脈硬化を出発点とする臓器障害は、生活の質の低下や健康寿命を短くすることにつながるだけでなく、場合によっては命に関わることもあるので、動脈硬化進行の要因となる生活習慣病のコントロール、特に早い時期からのコントロールが大切なのです。
高血圧症
診察室血圧 140/90mmHg、家庭血圧 135/85mmHg 以上で高血圧症との診断となります(高血圧治療ガイドライン2019, 日本高血圧学会)。血圧は様々な要因で変動し、寒冷、寒暖差、緊張、ストレス、感情(怒りなど)、睡眠不足、塩分摂取過剰等で血圧は上昇しやすくなります。例えば、自宅では問題ない血圧なのに、健診センターや医療機関で計測すると緊張して血圧が高く出てしまう方もおられます(白衣高血圧)。
高血圧による症状出現が疑われる方や血圧が高すぎる方は、すぐに薬物療法を開始することを考慮しますが、無症状の方については、血圧を上昇させるような環境があれば、まずはそれを改善いただきながら(生活療法、特に塩分過剰摂取の是正)、自宅での血圧を7〜14日間ほど測定・記録してもらい、その血圧の推移を見て薬物療法を行うか検討します。薬物療法開始後も、可能であれば自宅血圧を測定・記録いただき、その血圧推移を見ながら薬剤を調整していきます。
なかには、何らかの病変が原因で高血圧を呈している方もおられます(二次性高血圧症)。若い方や治療抵抗性の高血圧症の方に多く、そのような方に精査(しばらく安静後に採血し各種ホルモン値を測定する)をすることもあります。
脂質異常症 (高脂血症、高コレステロール血症)
脂質はヒトの体の構成成分として必要なもので、コレステロール(LDL-コレステロール、HDL-コレステロール等)、中性脂肪、遊離脂肪酸、リン脂質があります。ヒトにとって必要な物質であるのですが、LDL-コレステロールが多すぎたり、HDL-コレステロールが低すぎたりすると、動脈壁にコレステロールがたまりプラークを形成しやすくなり、動脈硬化につながります。動脈硬化進展が及ぼす影響は前述のとおりで、狭心症や心筋梗塞などの疾患を生じやすくなります。
血中の中性脂肪値が上昇する要因としては、体質的なもの、食生活の乱れ、運動量の低下などが挙げられ、特に体重と強く関連があり、肥満であると血中の中性脂肪値は上昇しやすくなります。
血中のLDL-コレステロール値が上昇する要因としては、体質的なもの、加齢、生活習慣の乱れなどが挙げられますが、中性脂肪と比較すると体重との関連は低くなります。
治療に際して、LDL-コレステロールの目標値は患者さんによって異なり、心筋梗塞の既往や狭心症治療歴のある方、糖尿病の方などは、より低いLDL-コレステロール値が目標となります。
治療としては、(LDL-コレステロール値にもよりますが)まずは生活習慣を見直していただき、その後も改善がみられない時は薬物療法を考慮します。内服薬としては、血中の中性脂肪値を低下させる薬剤(フィブラート系)や、コレステロール合成を抑制する薬剤(スタチン)またはコレステロール吸収を抑制する薬剤(エゼチミブ)などを使用します。
2型糖尿病
糖尿病は、血中の糖濃度(血糖)が高くなる疾患です。
血糖を下げる血中ホルモンとしてインスリンがありますが、このインスリンの不足(1型糖尿病)やインスリンの効きが悪くなることで(2型糖尿病)、慢性的に血糖が高い状態が持続し糖尿病となります。2型糖尿病において、肥満、過食、運動不足に伴い内臓脂肪が蓄積されると、インスリンの効きがますます悪くなり、血糖コントロールの悪化つながります。1型糖尿病は専門的な精査加療が必要となり、当院では2型糖尿病の方々を診療します。
糖尿病では、高血糖のためにのどが渇きやすくなったり、頻尿などがみられることがあります。また糖尿病では小さな血管が障害されやすくなります。網膜の血管が障害され目が見えにくくなったり(糖尿病性網膜症)、腎臓の血管が障害され腎機能低下を生じたりします(糖尿病性腎症)。また神経が障害され、足の指先のしびれなどを生じることもあります(糖尿病性神経障害)。他、糖尿病があると動脈硬化が促進することが知られており、前述の通り狭心症や心筋梗塞を生じやすくなります。
糖尿病では、1〜2ヶ月の血糖値を示すHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を指標に治療を行います。HbA1c値にもよりますが、まずは生活療法(運動、食事療法)を行い、改善がみられない場合に薬物療法を併用することとなります。
循環器疾患
ヒトは呼吸をして肺から体内(血液)へ酸素を取り込み、体外へ二酸化炭素を排出します。肺から届いた酸素の豊富な血液は心臓へ届き、心臓から動脈を介して全身へ送り出されます。血液は全身へ巡り酸素や栄養を供給した後、酸素の少なくなった血液は静脈を介して心臓へ戻り、心臓から肺へ送り出され、肺で酸素が豊富になった血液が心臓へ届き再び全身へ送り出されます。このように、体液を全身に輸送し循環させる働きを行うための器官が循環器です。これには、心臓、血管だけでなくリンパ管も含まれます。循環器に障害や異常があると、臓器や組織に酸素や栄養が行き届かなくなり、その部位で臓器障害を生じます。
循環器内科では、循環器疾患としてこれら心臓病変/疾患や血管病変/疾患を診療することが多いです。
高血圧症
前述したように、生活習慣病の一つである高血圧症ですが、循環器疾患の一つでもあります。様々な要因で血圧は上昇しますが、その中でも動脈硬化は主な要因の一つです。また高血圧があると動脈硬化が進みやすくなり高血圧↔︎動脈硬化の悪循環となります。
前述したように、動脈硬化は様々な循環器疾患の起点となることが多く、動脈硬化進展の抑制につながる血圧の管理は、循環器疾患の予防において非常に大切になります。また、心臓疾患や血管疾患のある方の中では、血圧が高いことにより病状が悪化する病態の方もおられ、そのような方々も、血圧を管理していくことは重要です。
不整脈
心臓は弱い電流が流れて規則正しく収縮・拍動しています(洞調律)。不整脈では、この規則正しさが損なわれて、脈が不規則になったり(期外収縮や心房細動)、脈が早くなったり(頻脈性不整脈)、脈が遅くなったりします(徐脈性不整脈)。
動悸、脈が飛ぶ、脈が走る、胸部症状、失神などの症状は不整脈による可能性があります。まずは症状がある時の心電図を評価し、不整脈の診断や評価をします。当院では心電図検査や24時間ホルター心電図を行います。また、症状がなくても精査や治療が必要な不整脈もあり、健診やウェアラブルデバイス(スマートウォッチなど)で不整脈を指摘されたことを機に受診し治療を開始される方もおられます。
治療は薬物療法のほか、不整脈よってはペースメーカー治療の適応であったり、カテーテルアブレーションが奏功するものもあり、高次医療機関での精査加療が必要となるものもあります。
心不全
心臓は全身へ酸素豊富な血液を送り出し、全身から心臓へ戻ってきた血液を肺へ送り出しており、血液を循環させるためのポンプ機能として働いています。心不全とはこのポンプ機能が損なわれる状態です。心臓のポンプ機能の低下により、肺から届いた血液を全身へ充分に送り出せなくなると、肺の血圧が上昇したり(肺うっ血、肺高血圧)、肺に水が溜まったり(胸水)して、息苦しさや胸苦しさがみられるようになります。また、全身からの血液を肺へ充分に送り出せなくなると、体に血液がうっ滞し、むくんだりします(特に両下肢のむくみ)。重篤な場合、肝臓がむくんで肝障害を生じることもあります(うっ血肝)。当院では胸部レントゲン写真や心電図検査、心エコー検査及び血液検査にて、心不全の診断や評価及び原因検索を行います。
治療としては、心臓の負担をとり体のむくみや胸水を減らす目的で利尿薬を使い循環体液量を減らしたり、心臓を休めるための薬を使ったりします。心不全の原因によっては更なる精査加療が必要となることもあります。
心臓弁膜症
心臓は解剖学的に大きく右心房、右心室、左心房、左心室に分けられます。全身から静脈を介して右心房へ血液が流入し、右心房から三尖弁を通って右心室へ流入し、右心室から肺動脈弁を通って肺動脈を介して肺へ流入します。肺からの血液は肺静脈を介して左心房へ流入し、左心房から僧帽弁を通って左心室へ流入し、左心室から大動脈弁を通って、大動脈を介して全身へ血液が送り出されます。このように、心臓の弁は血流が一方方向へ流れるような働きをしています。弁を扉に見立てるとイメージしやすいかもしれません。
弁の締まりが悪いと血流の逆流がみられ、この状態を逆流症もしくは閉鎖不全症と言います。また、弁が硬くなったりして開きが悪くなっている状態を、狭窄症と言います。これら弁の不具合(閉鎖不全症、狭窄症)を、心臓弁膜症と言います。当院では心エコー検査を行い心臓弁膜症の診断や評価を行います。心臓弁膜症の種類や程度によっては心不全症状(息苦しさやむくみ)を呈したり、手術が必要なこともあります。
狭心症
心臓を栄養している血管を冠動脈と言います。この冠動脈から心臓(心筋)へ酸素や栄養の供給が相対的に乏しくなると(心筋虚血)、胸痛、胸苦しさ、胸部絞扼感及び胸部圧迫感などの胸部症状を呈することがあり、狭心症と言います。
狭心症には2つ機序があり、一つは動脈硬化を基礎に冠動脈の内腔が狭小化(器質的狭窄)して生じるもの、もう一つは冠動脈が攣縮(血管が痙攣して縮こまる)して生じるものです(冠攣縮性狭心症)。いずれも症状がない時は有意な検査所見が得られにくく、運動負荷や薬物を投与して検査を行うことで診断が得られることが多いです。当院では安静及び運動負荷心電図や心エコー検査を行います。必要に応じて高次医療機関にて心臓カテーテル検査を行い、もし冠動脈に有意な器質的狭窄を認め、適応があればバルーン治療やステント治療が行われます。冠攣縮性狭心症の場合、誘因となるもの(寒冷、飲酒、喫煙)を避けつつ、薬物療法を行います。
急性冠症候群
心臓を栄養している血管(冠動脈)の中のプラークが破れると血栓が生じます。この血栓により冠動脈が詰まりかかったり、詰まることで心筋に酸素や栄養が不足したり(虚血)、心筋細胞が死んでしまう(壊死)病態が急性冠症候群です。
急な胸部症状(胸痛、胸部絞扼感、胸部圧迫感など)として発症することが多いです。
まず心電図や心エコー検査等を行いますが、急を要する疾患であり、緊急心臓カテーテル検査を経て緊急治療となることも多く、高次医療機関での精査加療を要します。
心筋症
心臓の筋肉(心筋)の疾患で、心筋が薄くなり心臓の収縮能が低下するもの(拡張型心筋症)や、心筋が厚くなり心臓が膨らみにくくなるもの(肥大型心筋症)などがあります。高血圧の罹病期間が長いとその影響で二次的に心筋が肥厚することもあります。
他、サルコイドーシスやアミロイドーシスなどの全身疾患に伴って心筋症がみられることもあります。当院では心電図検査、胸部レントゲン検査、心エコー検査、採血検査などを行い、評価します。検査所見や経過によっては、高次医療機関で更なる精査が必要となることもあります。
症状としては、心不全症状(息苦しさ、むくみ)のほか、不整脈がみられることもあります。治療は心筋症の原因により異なりますが、基本的には心不全症状(息苦しさ、むくみ)や不整脈に対して対症療法を行なっていきます。
動脈疾患
動脈疾患としては、主に大動脈瘤、大動脈解離、閉塞性動脈硬化症などが挙げられます。
大動脈瘤は、動脈壁が菲薄化し血管径が大きくなるもので、無症状のことが多く、偶発的に見つかることが多いです。血管径の大きさや形状によっては破裂する(突然死)リスクが高くなるので、外科的加療が必要となります。
大動脈解離は、動脈壁の中膜が裂けていく疾患です。急性大動脈解離は突然の胸背部痛として発症することが多く、急を要する疾患であり、高次医療機関での精査加療が必要となります。
閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化を基礎に下肢動脈が狭小化するため、下肢末梢の血流が低下するため、歩行時に下肢痛を生じたり(間欠性跛行)、足指の壊死を生じたりすることがあります。治療は薬物療法のほか、病変によってはカテーテル治療及び外科的バイパス術等の侵襲的加療をすることもあります。
動脈疾患は、高血圧や喫煙が危険因子であり、血圧管理が重要であるとともに、喫煙者においては禁煙することが必須となります。
先天性心疾患
先天性心疾患では、生まれつき、心臓の壁に穴があいていたり、大動脈や肺動脈の走行や大きさの異常がみられ、その影響で循環動態に異常がみられます。日本において、重篤なもののほとんどは幼少期に診断・治療されていますが、症状や心雑音などの所見に乏しい方では成人後に初めて指摘されることもあります(心房中隔欠損症や心室中隔欠損症の一部)。
心電図、胸部レントゲン写真、心エコー、採血検査などを行い評価し、必要があれば高次医療機関で心臓カテーテル検査などの精査を行い手術適応有無を評価します。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まってしまう疾患です。この無呼吸の他に、大きないびきを伴ったり窒息感で目覚めることもあります。他、自覚症状として、すっきり目が覚めない、昼間の眠気やだるさなどがありますが、本人が気づいていないことも多く、家族など第三者からの指摘をきっかけに医療機関を受診される方も多いです。
肥満、高血圧、2型糖尿病、慢性腎臓病、高尿酸血症、心不全、虚血性心疾患、不整脈、大動脈疾患、肺高血圧、脳卒中の方では、睡眠時無呼吸症候群の合併が多いことが知られており、睡眠時無呼吸症候群は、これら生活習慣病や循環器疾患と関連が深く、その重症度とも関連があると言われています。
空気の通り道(気道)が狭くなっている方で、睡眠中に舌根(舌の根元)が気道へ落ち込んでしまい、気道が閉塞して無呼吸を生じるタイプ(①閉塞性無呼吸症候群)と、睡眠中に脳の呼吸中枢がうまく機能しなくなり無呼吸となるタイプ(②中枢性無呼吸症候群)、および閉塞性無呼吸症候群と中枢性無呼吸症候群が合わさった③混合型無呼吸症候群があります。閉塞性無呼吸症候群の頻度が多く、次に混合型で、中枢性が最も頻度が少ないです。閉塞性無呼吸症候群は肥満と強い関連があり、中枢性無呼吸症候群は心不全との関連が知られています。
当院では、簡易モニター検査を自宅で行い、睡眠時無呼吸が重度であれば持続陽圧換気療法(CPAP療法)を施行しています。また、肥満の是正を中心とした生活習慣の改善や生活習慣病の管理を行い、循環器疾患や脳血管疾患の発症や重症化の予防に努めます。中等度の方は、希望があれば更に詳しい検査(ポリソムノグラフィー)を行い、評価・診断した上でCPAP療法を行います。ポリソムノグラフィーは入院下で行う必要があり、当院では施行できませんので、ご希望の際は検査可能な医療機関へ紹介させていただきます。